安藤税理士法人の加藤です。黒字倒産という言葉があるように、決算を組んだら利益が出ているのにもかかわらず、実際には手許に資金がないというようなことがあります。それは、損益計算と資金の仕組みが違うことから生じます。利益が出ているからといって必ず資金が増えているとは限りません。逆もまた然りです。
損益は収益から経費を引き、資金はそのまま入金から出金を引くことで求めます。この収益と入金、費用と出金の違いがズレを生みます。特に認識する時期の違いが重要です。
・売上
損益計算上、売上には様々な認識基準がありますが基本的には商品を引き渡した日など、収益が確定した日に認識するので、入金日がいつになるかという資金の回収方法の影響を受けません。現金販売のみを行っているならズレは生じませんが、売掛金の回収が遅れれば遅れるほどズレが大きくなります。
・仕入、経費
損益計算では費用は債務の確定日に認識します。クレジットカードで支払った場合を例にとるなら、カードで支払った日に債務の確定日として認識し、引落とし日にキャッシュが出ていくので期間にズレが生じます。
・棚卸資産
資金は商品や材料の購入によって出ていきますが、損益計算では購入したが未だ売却に関わっていないものを棚卸資産として計上し費用から外します。
・固定資産
資金は一括で購入したりローンで支払った日に出ていきますが、損益計算上は支払方法に関わらず、減価償却を通じて規則的に費用にしていきます。
・借入金
借入れた資金や返済の元本部分は損益計算には一切影響しませんが、資金は当然借入れたら増え、返済したら減っていきます。
このように、資金の出入りと損益計算上の認識との間には多くの相違点があります。
「手元にいくらキャッシュがあるのか」というのは、「いくら利益が出ているのか」というのと同様に、あるいはそれ以上に重要性の高いものであると思います。
損益の計算はお金が動いた日に認識するとは限らないということを念頭において、両者の違いを把握することが大切です。