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2024.10.31
税制改正
経営セーフティ共済:中小企業の経営リスクを支える制度

中小企業にとって、取引先の倒産は経営に甚大な影響を与えるリスクです。そのような連鎖倒産を防ぎ、経営の安定を支援するために設けられたのが「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」です。今回は、この制度の仕組みやメリット、注意点について詳しく解説します。

・経営セーフティ共済とは?
この共済制度は、中小企業が取引先の倒産によって連鎖倒産や経営困難に陥ることを防ぐためのもので、経済産業省所管の独立行政法人・中小企業基盤整備機構が運営しています。加入することで、取引先が倒産した場合に払い込んだ掛金の最高10倍(上限8,000万円)まで融資を受けることができ、急な資金ニーズに対応する安心感があります。

・掛金の設定と税制上のメリット
掛金は月額5,000円から最大20万円まで設定可能で、積立の限度額は800万円です。限度額まで積み立てると掛金の支払いは終了します。また、掛金は法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費として全額控除されるため、節税効果が非常に高いです。掛金を1年分まとめて前払いする「前納制度」もあり、これを活用することでさらに効率的な運用が可能です。

・解約時の取り扱い
解約時においても特筆すべき特徴があります。40カ月以上掛金を納めると、任意解約でも掛金が100%戻ります(40カ月未満だと元本割れのリスクがあります)。法人の場合、解約した際に益金に計上され、個人事業主の場合は事業所得の雑収入として計上されるため、解約のタイミングや運用方法について慎重な検討が必要です。

・節税効果を高める「税金の繰り延べ」活用
経営セーフティ共済の大きな魅力の一つは「税金の繰り延べ効果」です。加入者の間では「掛金を損金にして積み立て、必要に応じて解約し、再加入する」という節税テクニックが広く活用されていました。しかし、令和6年度税制改正では、再加入時の損金算入制限が導入されます。

・【税制改正】令和6年10月以降の解約の場合
令和6年10月以降に解約した後に再加入した場合、解約から2年間は掛金が損金に算入できなくなるという改正が加わりました。再加入自体は可能ですが、掛金の損金算入が制限される点に注意が必要です。この改正により、再加入を前提とした税金の繰り延べ効果の利用に一定の制限が設けられました。今後はさらに慎重なタックスプランニングが求められます。

・一時貸付制度で資金需要をサポート
取引先の倒産が発生していない場合でも、資金が必要な際には「一時貸付制度」を利用できます。掛金の範囲内で低金利(年利0.9%)の融資を受けることができ、資金調達手段の一つとして活用可能です。借入期間は1年で、元本の据置が可能な「同額借換」も行えます。資金が必要で解約を検討している場合、一時貸付制度を検討する価値があります。

・改正を踏まえた慎重なタックスプランニングを
経営セーフティ共済は税金の繰り延べ制度としても有用ですが、今後の運用では再加入後の損金算入制限を見据えた慎重な判断が求められます。解約による益金の発生タイミングや、再加入に伴う損金不算入期間を考慮したタックスプランニングが必要です。

・経営リスクに備えるための活用を
この共済制度の本来の目的は、連鎖倒産リスクに備えるためのものです。制度の節税効果や税制改正の影響を理解しながら、経営の安定を図る手段として、経営セーフティ共済をぜひご検討ください。特に設立から1年以上経過した会社や個人事業主の方にとって、有用な制度となることでしょう。

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