安藤税理士法人の土屋です。平成29年度以降、特別徴収税額決定通知書に従業員のマイナンバーが記載されることになりました。
特別徴収税額決定通知書とは、例年5月に市区町村から住民税の特別徴収義務者(特別徴収を行う義務のある事業者)宛てに送付される書類で、6月から翌年5月までの給与から徴収する住民税額の通知が目的です。多くの事業所がこの通知書に従って住民税の徴収・納付を行っています。
総務省の通達によると、今年度からこの通知書に従業員のマイナンバーが記載されるとのことです。したがって事業者は、従来のマイナンバーの取扱いと同様、当通知書も施錠できる書庫等に保管するなど、漏えい防止の安全管理措置を講じる必要があります。
なおマイナンバーは納税義務者である従業員全員のものが記載されるため、事業所にマイナンバーを提出していない人(提出を拒否した人)の番号も自動的に通知される場合があります。
従来マイナンバーは官公庁が税や社会保険を管理するために利用するもので、事業所が使用することはありません。よって市民→事業所→役所という提供はあっても、役所→事業所という提供はこれまで行われていませんでした。
この一連の決定に関し、以下のように複数の観点から疑問の声があがっています。
・マイナンバーは番号法に基づく関係事務の範囲外の使用が禁止されており事業所にとって実務上不要だが、記載の必要があるのか?(安全管理の負担を増やすだけでは?)
・マイナンバーを事業所に提出したくない従業員のプライバシー権侵害(憲法違反)ではないか?
・自治体から事業所への通知書送付方法はどうするか?(普通郵便では誤配送など漏えいリスクが高く、書留では郵送コストが膨大になる)
もともと賛否両論あったマイナンバー制度ですが、今回の取扱い方法に関してはマイナンバー賛成の立場からも疑問の声があるようで、通知書にマイナンバーを記載しない自治体も見られます。
中小企業にとって負担の大きい制度なので、できる限りトラブルを防げるような慎重な対応を期待します。