安藤税理士法人の加藤です。法人と役員との間では、建物の貸し借りが行われることがあります。その場合、地代家賃を適正な金額でやり取りをしていれば税務上問題にはなりませんが、相場と比較して著しく高額であったり、低額であったりした場合には問題が生ずることになります。
主に問題になるのは以下の2パターンです。
それぞれの取扱いと適正額を算定する目安を整理してみましたので、参考にしてみて下さい。
1.法人が役員に対して無償又は著しく低額で貸与している場合
(1)法人の取扱い
税務上は受け取るべき地代家賃を受け取って、実際に受け取っている金額との差額は役員報酬を支払ったものとみなして過大役員報酬の判定を行います。
(2)役員の取扱い
支払うべき金額と実際に支払っている金額との差額分が、役員報酬として給与所得に加算がされることになります。
(3)適正額の目安
原則として、その建物を第三者から借りた場合に支払う通常の家賃を基に判断することになります。
2.役員が法人に対して著しく高額で貸与している場合
(1)法人の取扱い
役員に支払っている金額のうち、適正とされる部分の金額は地代家賃として損金の額に算入され、適正額に比べて高額とされる部分の金額は役員報酬として過大役員報酬の判定を行います。
(2)役員の取扱い
実際に受け取っている金額と適正額との差額分は、不動産所得ではなく役員報酬として給与所得に加算されます。
(3)適正額の目安
非常に細かいですが、建物の床面積等から以下の3つに区分して目安が定められています。
・床面積が132㎡(木造家屋以外は99㎡)以下のもの
適正額は次の①~③の合計額で計算します。
①(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%
②12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3平方メートル)
③(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
・床面積が132㎡(木造家屋以外は99㎡)を超え、240㎡以下のもの
適正額は以下の算式で計算します。
(A×12%+B×6%)× 1/12
A その年度の家屋の固定資産税の課税標準額
B その年度の敷地の固定資産税の課税標準額
※木造家屋以外の家屋は12%→10%
・床面積が240㎡を超えるもの
・240㎡以下であっても、プールなど役員個人の趣味を著しく反映した設備を有するもの
適正額は「取得価額」「支払賃貸料の額」「内外装の状況」等各種の要素を総合勘案して判断がされます。