安藤税理士法人の加藤です。事業を行う個人は、原則として2年前の課税売上高が1,000万円を超えると課税事業者となり、消費税を納めなければなりません。しかし、その消費税は全ての取引に課せられるわけではなく「国内において事業として対価を得て行われる資産の譲渡等」に該当するものが対象とされます。そして消費税における「事業として行われるもの」は「同種の行為を反復、継続、独立して遂行すること」と定義されており、所得税法に規定する事業よりも広くなっているため、対象となるのは事業所得に限りません。主に注意が必要なのは事業所得の他に不動産所得、譲渡所得など複数の所得がある場合です。
<不動産所得>
副業として行っている不動産収入でも、それが反復・継続・独立して行われるものであれば事業に該当し、課税の対象になります。特に店舗や事務所を賃貸している場合は課税売上となり、1,000万円の判定や消費税額の計算に含めなければなりません。消費税には「5棟10室基準」は関係ありませんので、例え1部屋でも事業に該当することになります。
<譲渡所得>
譲渡所得は自宅などの生活用動産の譲渡だと消費税は課税されませんが、事業所の売却などは事業に付随するものとして課税がされます。また、自宅兼事務所や乗用車など事業と家事両方に使う資産の場合は、事業と家事分を区分して事業分のみ課税売上となります。さらに、建物と土地を同時に譲渡する場合、土地の譲渡は非課税なので建物と土地にも按分して計算を行います。譲渡所得は日常的に発生するものではない上に金額も大きくなることが多いので所得にばかり気が行きがちですが、消費税の計算にも忘れずに算入する必要があります。
消費税の場合は所得税の様に10種類の所得区分は行いません。あくまで取引が課税かどうかという判断基準があるのみです。そのため事業所得以外の課税売上を計算に含めずに判定してしまい、消費税の届出や申告を忘れるというケースになってしまわないように注意が必要です。