ANDOTAX ブログは、こちら

2026.3.16
財務改善・財務分析
忙しいのに儲からない、薄利多売の落とし穴と抜け出し方

1. 薄利多売は悪ではない(ただし“主役”にしない)

薄利多売は、決して「やってはいけない戦略」ではありません。業種によっては、回転率を上げて利益を積み上げるやり方が王道ですし、知名度を広げたり、新規客を増やしたりする面でも効果があります。問題は、薄利多売を“主役”にしてしまうことです。単価が低い商品だけで会社を回そうとすると、売上は増えても利益が残りにくく、忙しさだけが増えやすくなります。中小企業は資本力に限りがあるため、消耗戦になると一気に苦しくなります。薄利多売は、利益がしっかり残る本命商品を売るための「入口」として位置づけると強い戦略になります。入口で接点をつくり、信頼を積み上げ、最後は高利益の商品・サービスへつなげる。これができると、薄利多売は“武器”になります。まずは自社の薄利商品が「主役」なのか「入口」なのか、立ち位置を明確にするところから始めましょう。

2. 薄利多売が苦しくなる2つの理由(資金・人件費)

薄利多売が中小企業にとって厳しくなりやすい理由は、大きく2つです。ひとつは資金が先に尽きやすいこと。単価が低いと、同じ利益を出すために売上量が必要になり、仕入れ・外注・配送・広告など、先に出ていくお金が増えます。入金が後になる業態では、売上が伸びるほど運転資金が必要になり、資金繰りが苦しくなるケースもあります。もうひとつは人件費が膨らみやすいこと。件数が増えるほど、受注処理、問い合わせ対応、納品管理、クレーム対応などの手間が増え、人を増やす・残業が増える、という流れになりがちです。ところが粗利率が低いと、人件費の増加を吸収できず、利益が残らないまま固定費だけが重くなります。この「資金」と「人件費」の二重苦が、薄利多売の怖いところです。

3. 「忙しいのに儲からない」状態が起きるメカニズム

「売上は増えているのに、なぜかお金が残らない」「社長も社員も忙しいのに利益が薄い」。この状態は、薄利多売で起きやすい典型パターンです。原因は、売上の増加と一緒に“コストと手間”も膨らむ構造にあります。単価が低い商品は、1件あたりの利益が小さいため、件数をこなして初めて利益になります。しかし件数が増えると、現場の作業が増え、ミスやトラブルの確率も上がり、確認や修正の手間が増えます。結果として、残業や追加人員が必要になり、人件費が増加します。さらに、薄利商品は値上げもしにくいため、コスト上昇を価格に転嫁できず、粗利がさらに削られることもあります。こうして「忙しさ」と「利益」が比例しない状態が続くと、会社の体力が削られ、社長の判断余力も奪われます。売上が伸びているのに苦しいときは、努力不足ではなく“利益が残る設計”になっていない可能性が高いのです。

4. 薄利多売を“入口商品”として使う考え方

薄利多売をうまく使うコツは、「入口」としての役割をはっきりさせることです。入口商品は、買いやすい価格で最初の接点を作り、安心してもらい、次の提案につなげるためのもの。ここで大切なのは、入口単体で儲けようとしないことです。入口の目的は“数を売る”ことではなく、“本命商品に進んでもらう”こと。たとえば、初回限定の低価格メニュー、導入しやすい小さなプラン、お試しサービスなどでハードルを下げ、顧客の悩みやニーズを把握したうえで、上位プランや継続契約につなげます。その際、「誰に売る入口なのか」「入口から何を提案するのか」「提案のタイミングはいつか」を決めておくと、薄利多売が消耗戦になりにくくなります。入口は集客力が強い反面、次がなければ利益が残りません。入口を作った時点で、出口までをセットで設計するのがポイントです。

5. 入口の先に必ず「出口(利益が残る商品)」を用意する

入口商品を作るなら、必ず“出口”を用意しましょう。出口とは、利益がしっかり残る本命商品や、継続課金、保守・サポート、追加サービスなど、会社の利益の柱になるものです。入口で関係ができたお客様に、自然な流れで出口へ進んでもらえる導線があるかどうかで、薄利多売の成否は決まります。注意点は、いきなり高額商品を押し売りしないことです。「安いから買ったのに、急に高い提案をされた」と感じると、信頼が崩れます。そこで、段階的に価値を感じてもらえる設計が有効です。入口→標準→上位→継続、と階段を作り、各段階で「次を選ぶ理由」を用意します。出口が整うと、入口で多少利益が薄くても、全体として利益が残りやすくなり、資金繰りも安定します。薄利多売を続けるほど苦しい会社は、入口はあるのに出口が弱いケースが多いのです。

6. 今日からできる見直しチェック(主役はどっち?)

最後に、今日からできる見直しポイントを3つに絞ります。①一番売れている商品は、利益が残る商品か。売れているのに利益が薄いなら、主役が入口になっている可能性があります。②忙しくなるほど利益も増える構造か。売上が増えると残業や人員が増え、利益が追いつかないなら、粗利率と固定費のバランスが崩れています。③入口から出口へ進む導線があるか。入口商品を買ったお客様へ、次に何を、いつ、どう提案するかが決まっていなければ、薄利多売は消耗戦になります。薄利多売を否定する必要はありません。むしろ使い方次第で強い戦略です。ただし中小企業では、薄利多売は“主役”ではなく“入口”に置くほうが安全です。あなたのビジネスはいま、主役がどちらになっているでしょうか。

ANDO
TAX
ブログ