ANDOTAX ブログは、こちら

2025.6.1
トピックス
役員賞与(事前確定届出給与)を活用しよう

今月は「事前確定届出給与」を取り上げます。
________________________________________
事前確定届出給与とは
事前確定届出給与とは、役員に対する賞与(役員賞与)の一種で、一定の要件を満たすことで、法人税の計算において損金(経費)として認められる制度です。通常、役員報酬は毎月定額で支払われる「定期同額給与」が原則ですが、この制度を利用することで賞与も損金算入が可能になります。
この制度の最大の特徴は、支給額や支給日を事前に決定し、所轄税務署に届け出ることで、損金算入の条件を満たせる点です。ただし、要件を守らない場合は損金として認められないため、注意が必要です。
________________________________________
事前確定届出給与の要件
この制度を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。
1. 事前に決定する
賞与の支給額と支給時期を、株主総会や取締役会などで事前に決議し、その内容を明確にしておく必要があります。
2. 税務署への届出
決議後1か月以内、または会計期間開始日から4か月以内の早い方の日までに、税務署に届け出を行います。
3. 届出通りの支給
届出した内容に基づき、確定した金額を決められた日に支給する必要があります。届出と異なる支給額や支給日になると、損金算入は認められません。
4. 金額の確定性
賞与額は事前に確定しており、変動がないことが条件です。例えば、業績に応じて変動するような仕組みは認められません。
________________________________________
事前確定届出給与のメリット
1. 法人税の負担を軽減できる
事前確定届出給与を損金として計上することで、利益が減少し、結果として法人税の負担が軽減されます。特に、中小企業では大きな節税効果を期待できます。
2. 予算管理がしやすくなる
支給額と支給時期を事前に確定するため、経営計画や予算管理がより明確になります。これにより、資金繰りの見通しが立ちやすくなり、経営の安定化に寄与します。
3. 税務リスクを軽減できる
税務調査では、役員報酬が損金として適切に処理されているかがよく確認されます。事前確定届出給与は制度に基づいて支給されるため、税務署からの指摘リスクを減らせます。
________________________________________
事前確定届出給与のデメリット
1. 届出期限を守る必要がある
届出の期限が非常に厳格で、これを守らなければ損金算入が認められません。届出忘れや遅延は、後から修正できないため、計画的な準備が必要です。
2. 柔軟性がない
事前に決めた支給額や支給日を変更することは基本的に認められません。そのため、業績が悪化した場合でも、届出通りに支給しなければならず、経営に負担がかかることがあります。
3. 手続きが煩雑
株主総会や取締役会での決議、税務署への届出、支給の実行など、多くの手続きが必要です。これらの作業を正確に行うためには、専門的な知識と時間が求められます。
4. 損金算入が認められないリスク
届出内容と異なる支給額や支給日になった場合、全額が損金不算入となる可能性があります。これにより、税務上のトラブルや資金繰りの問題が生じるリスクがあります。
________________________________________
事前確定届出給与の活用事例
以下は、この制度を活用した企業の事例です。
ケース1: 節税効果を得た中小企業
ある中小企業では、利益が多かった年度に事前確定届出給与を活用し、役員賞与として約500万円を支給しました。この結果、約150万円の法人税を削減でき、その分を設備投資に回すことができました。
ケース2: 計画不備で損金算入が認められなかった事例
一方で、別の企業では、届出期限を忘れてしまい、支給額が損金として認められませんでした。このケースでは、利益が想定以上に膨らみ、結果として多額の法人税を支払うことになりました。
________________________________________
事前確定届出給与を成功させるためのポイント
この制度を効果的に活用するには、以下のポイントを押さえることが重要です。
1. スケジュール管理を徹底する
届出期限を守るため、事前に十分な準備を行い、スケジュールを明確にしておきましょう。
2. 適切な金額設定を行う
現実的な支給額を設定し、無理のない計画を立てることが大切です。
3. 専門家のサポートを受ける
制度の理解や手続きには専門知識が求められるため、税理士や会計士に相談することをおすすめします。
4. 業績変動を見越した計画を作成する
事前にリスクを想定し、必要に応じて予備資金を確保しておくことが重要です。
________________________________________
まとめ
事前確定届出給与は、適切に活用すれば法人税の負担を軽減し、経営計画をスムーズに進めるための有効な手段です。ただし、手続きの厳格さや計画性の欠如によるリスクもあるため、しっかりと準備を整えた上で活用することが重要です。
本制度に関心のある方は、ぜひ当事務所までご相談ください。専門的なサポートを通じて、最適なプランを提案いたします。

 

ANDO
TAX
ブログ