事前確定届出給与とは?中小企業の社長が役員賞与で失敗しないための注意点 事前確定届出給与は、役員賞与を損金算入するために重要な制度です。 ただし、届出期限や支給日・支給額を間違えると損金不算入となるリスクがあります。 中小企業の社長向けに、活用時の注意点をわかりやすく解説します。 「社長にも賞与を出したい」 「利益が出そうなので、役員賞与で調整できないか」 中小企業の決算前になると、このような相談を受けることがあります。 従業員への賞与であれば、通常は会社の経費として処理できます。 しかし、役員への賞与は少し注意が必要です。 役員に対する給与は、税務上、自由に支給すれば必ず損金になるわけではありません。 国税庁は、役員給与について、定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与など、 一定の要件を満たすものを損金算入の対象として整理しています。 その中でも、中小企業でよく使われるのが、事前確定届出給与です。 事前確定届出給与とは 事前確定届出給与とは、簡単に言えば、 「いつ、誰に、いくら役員賞与を支給するか」を事前に決めて、税務署へ届け出る制度 です。 たとえば、 「代表取締役に、12月25日に100万円を支給する」 といった内容を、あらかじめ決議し、期限までに税務署へ届け出ます。 この届出どおりに支給することで、役員賞与であっても会社の損金として認められる可能性があります。 逆に言えば、 あとから利益を見て、好きなタイミングで役員賞与を出す ということは、原則として税務上かなり危険です。 届出期限に注意が必要です 事前確定届出給与で最も大切なのは、届出期限です。 国税庁の案内では、事前確定届出給与に関する届出は、原則として、 株主総会等で決議した日から1か月を経過する日、または会計期間開始の日から4か月を経過する日など、 一定の期限内に提出する必要があります。 つまり、決算が近づいてから、 「今期は利益が出そうだから、社長に賞与を出そう」 と思っても、すでに届出期限を過ぎていれば、制度を使えない可能性があります。 ここは本当に注意が必要です。 事前確定届出給与は、名前のとおり事前に確定して届け出る制度です。 決算直前の節税策として、あとから自由に使えるものではありません。 届出どおりに支給しないと損金不算入になる もう一つ大きな注意点があります。 それは、届出書に記載した内容どおりに支給しなければならない、という点です。 支給日が違う。 支給額が違う。 一部だけ支給する。 資金繰りが厳しくなったので支給しない。 このような場合、税務上、損金として認められない可能性があります。 国税庁の質疑応答事例でも、届出どおりに支給した役員給与は損金算入できる一方、 届出額と異なる支給をした場合には、事前確定届出給与に該当せず損金不算入となる考え方が示されています。 たとえば、100万円支給すると届け出たのに、資金繰りの都合で80万円だけ支給した場合。 この場合、「80万円は払ったから80万円だけ経費でいいですよね」と単純には考えられません。 届出どおりでないことにより、損金不算入となり、結果として法人税等の負担が大きくなる可能性があります。 節税だけで考えると危険です 事前確定届出給与は、うまく活用すれば役員賞与を損金算入できる制度です。 しかし、これは単なる節税テクニックではありません。 なぜなら、届出をした以上、会社はその日にその金額を支給する前提で資金繰りを考えなければならないからです。 たとえば、半年後に300万円の役員賞与を支給すると決めた場合、会社にはその資金が必要になります。 利益は出ている。 でも、借入返済や仕入れ、人件費の支払いで現金が不足している。 このような会社では、役員賞与を出すことで、かえって資金繰りを苦しくしてしまうこともあります。 つまり、事前確定届出給与を検討するときは、 ・税金がどうなるか ・会社に利益がどれだけ残るか ・支給時期に資金が足りるか ・借入返済に影響しないか ・社会保険料や個人の税金まで含めて適正か ここまで含めて考える必要があります。 中小企業の社長にとって大切な考え方 中小企業では、社長の役員報酬や役員賞与は、会社の利益、資金繰り、金融機関評価にも影響します。 「税金を減らしたい」 この気持ちはよく分かります。 しかし、税金だけを見て役員賞与を決めると、会社に必要な現金が不足することがあります。 大切なのは、 税金を減らすことではなく、会社に必要な利益と資金を残すこと です。 事前確定届出給与は、正しく使えば有効な制度です。 しかし、使い方を間違えると、損金不算入となり、かえって税負担が重くなることもあります。 こんな会社は早めに相談してください 次のような会社は、早めに顧問税理士へ相談することをおすすめします。 ・今期、利益が大きく出そう ・社長や役員に賞与を出したい ・役員報酬の金額を見直したい ・決算前に税額の概算を知りたい ・節税だけでなく、資金繰りも含めて考えたい ・来期の利益計画を作りたい 特に、事前確定届出給与は期限があります。 「決算前に考えればいい」では遅いケースがあります。 決算後、役員報酬や役員賞与の方針を決めるタイミングで、来期の利益計画とあわせて検討することが大切です。 まとめ 事前確定届出給与は、役員賞与を損金算入するために有効な制度です。 ただし、 ・法人で使う制度であること ・期限内に届出が必要であること ・届出どおりの日付と金額で支給する必要があること ・届出どおりでない場合、損金不算入となるリスクがあること ・節税だけでなく、資金繰りまで考える必要があること この5つは必ず押さえておきたいポイントです。 役員賞与は、単なる税金対策ではありません。 会社の利益計画、資金繰り、社長個人の生活設計まで含めて考えるべき重要な経営判断です。 安藤税理士法人では、決算前検討会や月次決算書を通じて、税額予測だけでなく、 会社に必要な利益や資金繰りまで含めたアドバイスを行っています。 安藤税理士法人の主要サービスには、ANDO式月次決算書、経営計画書の作成支援、 単年度利益計画、決算前検討会、決算後ミーティングなどが含まれています。 「役員賞与を出したいけれど、税務上問題ないか不安」 「社長の役員報酬や賞与を、会社の利益計画とあわせて考えたい」 このような経営者の方は、早めにご相談ください。 安藤尚志|安藤税理士法人 代表 未来会計・経営計画・収益改善を専門とする税理士として、東海地区の中小企業を支援しています。