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2016.5.10
スタッフブログ
貸倒の税務上の取扱い

安藤税理士法人の加藤です。売掛金や未収入金などの債権がある相手先が倒産することなどにより、その資金を回収できなくなることがあります。

法人税法上は原価・費用・損失の3つが損金を構成しますが、この場合は貸倒れという損失として捉えます。

ただし、貸倒れの判断は会社の主観によるところがどうしても大きく、客観性を示すのが難しい部分でもあります。そこで貸倒れの取扱いには一定の決まりがあり、要件を満たしていないと損失として認められません。貸倒れの取扱いを誤ってしまうと債権の回収ができない上に、損金にもならないという二重の痛手を負ってしまいます。

1.法律上の貸倒れ

会社更生法や民事再生法などの規定により債権が消滅した場合には、法律上債権がなくなっているのでその債権を切捨て、損金の額に算入されます。この場合は損金経理をしていなくても、切捨ての決定があった年度に強制的に損金になります。

なお、債務者の債務超過が相当期間継続し、弁済を受けることができないと認められる場合には書面により債務免除を通知した金額が損金算入額となりますが、債務者に弁済能力があるとみなされた場合は債権は消滅したとは認められません。

2.事実上の貸倒れ

事実上の貸倒れとは、法律上は債権が存在するにもかかわらず、債務者の資産状況や支払能力からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合をいいます。

担保がある場合は処分した後でなければ不可であること、損金経理が必須であること、全額回収不能が明らかであることが要件になります。この「全額」というのが見落としがちです。

強制的に損金の額に算入される1.と違い、明らかに全額が回収不能というのを証明することが必要な上に、適時の損金経理が求められるため、問題になりやすいポイントでもあります。

3.形式上の貸倒れ

売掛債権の特例です。売掛金のような反復・継続して取引が行われるものを対象にしています。したがって不動産取引のような単発取引や、貸付金は対象となりません。

以下に該当する場合には備忘価額1円を残した金額を損金経理することにより損金算入が認められます。

・債務者との取引停止後1年以上経過した場合(担保物がある場合を除きます。)

・売掛債権が取立費用に満たない場合で、督促したにもかかわらず弁済がないとき

 

基本的には「回収のためあらゆる努力をしたが、どうしても回収ができない。」ということを第三者に証明できるかどうかが判断の分れ目になります。少しでも回収の余地があったりすると認められず、貸倒れには非常に繊細な取扱いが要求されます。安易に債務免除を行うと寄付金や給与とみなされてしまう場合がありますのでご注意ください。

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